トランプ大統領誕生で思ったこと ~ 大都市圏で生まれ育ち、そこから一歩も外に出たことがない人は田舎のリアリティがわからない

 ドナルド・トランプ氏が第45代アメリカ合衆国大統領に当選した。その背景は様々に言われており、どれもその通りなんだろうと思う。

 今回、特に多くのメディアなり識者がクリントン大統領誕生を予想していたが外れた、という点を興味深く思った。背景として、彼らが隠れトランプ支持者の数を読み誤った、ということがあるようだ。

 CNN出口調査を見ていて興味深いと思った点をあげていくと、人種では白人と非白人での支持率の違いが鮮明で、非白人の74%がクリントン支持、21%がトランプ支持であるのに対し、白人の58%がトランプ支持、37%がクリントン支持となっている。今回の調査での白人率は70%であるので、全回答者24537人中、白人のトランプ支持者が約10000人に対し、非白人のクリントン支持者は5000人強であり、いくら移民の国とはいえ、まだまだアメリカが白人マジョリティの国であることを思い出させてくれる。

 概ね女性はどの人種でもクリントン支持に回ったようだが、黒人女性に至っては94%がクリントン支持とのことで、トランプ忌避心理の大きさを物語っている。

 普段選挙に行かない人がトランプに投票した、という話があるが、初めて選挙に行った人は全体の1割、そのうち56%がクリントンに投票となっている。若年層はクリントンに投票したようなので、その影響が強いのかもしれない。

 クリントンもトランプも嫌だ、という人が多いと聞いていたが、「opinion of clinton and trump」に対し、18%だけがどちらも「unfavorable(好ましくない)」と答えている。

 私の関心分野の都市と田舎については、以下の通り

 都市部在住者が全体の34%でそのうちクリントン支持が59%、トランプ支持が35%
 都市郊外在住者が全体の45%でそのうちクリントン支持が45%、トランプ支持が50%
 田舎在住者が全体の17%でそのうちクリントン支持が34%、トランプ支持が62%

 都市部はクリントン、郊外と田舎はトランプということになるだろう。メディアや識者の多くが居住する都市部ではクリントン支持者が多い、という点が今回予測を見誤った大きな要因といえるのではないか。

 これはアメリカに限った話でなく、日本でも同様だと思う。田舎からは都市部の有り様はある程度わかる。住んだことがあったりするし、メディア等で様々な角度からの情報が流れてくるので嫌でも知ることになる。一方、都市部居住者は関心がある人以外は田舎のことを知る機会に乏しい。知らなくても普通に生活できてしまう。スーパーの野菜売り場などは数少ない接点じゃないかと思うが、最近高くなってきたなぁ、とか、ほとんど値段しか関心を持てないのではないか。あとは放射能騒動のときに顕になったように、産地表示は関心は持たれているだろうが、誰がどういう思いを持って作っているかとか、なかなか想像しづらい。

 私は常々、様々な政策を実質実行している中央の行政担当者の多くが大都市圏で生まれ育ち、そこから一歩も外に出たことがないような人たちで構成されているのではないか、とにらんでいる。特に50代より下で。裏付けるデータは見たことがないので、確定的なことはいえないが、大きくは外していないと思う。

 都市部居住者には田舎のリアリティを知るようにしてほしいと願うのだが、中国の文革時代の下放みたいなことは出来ないだろうし、何か妙案はないものか。やはり、こうした「地方からのしっぺ返し」がないとどないも動かないのかもな。