31年目のチェルノブイリ関連記事まとめ(ロシア語・ウクライナ語・英語サイト編)

 ロシア語・ウクライナ語と英語圏のチェルノブイリ関連記事をGoogle翻訳の助けを得ながらナナメ読みしたのだが、昨年に旧石棺が新石棺(アーチ)で覆われ、いよいよ今年から解体作業が始まる、ということで、事故発生から最近の事情までをまとめた記事がいくつも出ていた。

 ロシア語・ウクライナ語記事だと例えば、こちらとかこちらとかこちらなど。

 検索すると、30年の時の記事へのリンクなども見かけられ、やはり、31年目ということで、5で割り切れる数字でない年の場合、やや低調となるようだ。福島の原発事故も10年という区切りの時までやや低調になるのかもしれない。

 ウクライナ紛争後、ウクライナの原発では原発用核燃料がロシア製からウエスチングハウス社製などに切り替えられているが、ロシアのサイトでは、以前、チェコの原発が同様に切り替えたが、トラブルで元に戻した経緯などを踏まえ、ウクライナ各地の原発でこのまま使用を継続すれば第二のチェルノブイリとなるであろう、との警告がなされている。東芝を危機に追い込んでいるウエスチングハウスだが、いろんな意味で注視し続ける必要がある、といえるだろう。

 日本でもこちらなどで報道されていたように、チェルノブイリ30km圏内での太陽光発電プロジェクトについての記事も出ていた。こちらはVOAの英語記事で、ウクライナのセメラーク環境・天然資源相へのインタビューが掲載されていて、手始めに110万ドルの民間投資により、1500kWの太陽光発電所が建設できるとし、将来的には累計で250万kWの電力供給が可能となるとしている。チェルノ4号炉は100万kW出力だったが、チェルノブイリ原発全体の稼働時の出力の半分程度の電力を生産できることになる。

 このプロジェクトの利点としては、使い途のない土地の有効活用や既存の電力設備が活かせることなどが挙げられるが、こちらの日本語記事で言われているように「このプロジェクトの最大の問題は太陽光パネルへの放射線の影響とメンテに携わる技術者の被曝リスク」という問題があり、こうした点を解決するのは簡単ではないだろう。

 Yandex Newsでチェルノブイリで検索すると山ほど記事が出てきて、約500ほどタイトルだけ見たが、それ以上は断念した。重複も結構あるが、記事の半分ほどは旧ソ連圏各地での事故処理作業者を称えるイベントのローカル新聞の記事。毎年思うが、ソ連が国を挙げて各地から人をかき集め、この事故に取り組んだことの証ともいえるだろう。

 日本の場合、ローカル新聞で福島第一原発事故が取り上げられるのは自主避難者関連や福島支援の記事が多い気がするが、事故処理作業者の健康問題は旧ソ連圏に比べると大きな問題とはなっておらず、事故の経緯や国情の違いもあるとは思うが、それなりにチェルノブイリ事故の教訓を生かしたと言って良いのかもしれない。

 ただ、日本でも昨年、「白血病発症の福島原発作業員に労災認定」という記事にもあるように、少しずつ問題が発覚しつつあり、今後、大きな社会問題となる可能性はある。また、事故当時、風下に当たる海上にいた米兵の被曝問題についても、“「トモダチ作戦」訴訟、米政府が日本の見解に反論――被曝兵士の裁判は米国で実施か”などを見ると、アメリカというガイアツにより、別の側面からこの問題に疑問が投げかけられることになるかもしれない。

 以下に、冒頭でリンクを上げた記事から興味を引いた部分を抜粋してみる。


 2016年、ウクライナ大統領はチェルノブイリ30km立入禁止区域での生物圏自然保護区設立の法令に署名し、2017年3月31日に発効した。これは10km圏を除くエリアが対象となっていて、特別な産業用エリアが設置される予定で、放射性廃棄物処分場やソーラーパネルの設置などが計画されている。

 この区域に入る条件などはこれから検討されるが、10km圏内に入るにはこれまで同様に厳格な条件が課せられる。

 (昨年の)5月には福島第一原発事故の植物相(flora)と動物相(fauna)への影響を調査する日本との共同プロジェクトが始まっていて、ウクライナから12の研究機関が参画している。

 チェルノブイリ立入禁止区域への訪問者数は非常に増えており、2016年には32000人となり、2015年から倍増している。

 リヴィウから持ち込まれたゴミがチェルノブイリゾーン内に投棄されているのが見つかった。ゾーン内をゴミ捨て場にしようとする計画があるが、ゾーン内にはサマショールが今も約150人住んでおり、ここをゴミ捨て場にすべきでない。

 福島では帰還が始まっているが、チェルノブイリでは帰還しないのはなぜか? 気候条件の違い(海に近い)と福島では地形が山がちである点が挙げられる。福島では山があることにより、放射性物質が上から下に流れていくが、平地のチェルノブイリではあまり移行せず残ったままとなっている。日本での60年代の大気圏核実験のフォールアウトからの観察結果では1年で降下した核種のうち8%しか残留しなかった(?)。チェルノブイリの経験は福島にとって重要だが、それぞれ独自の条件下で考える必要がある。

 2016年11月に新アーチで覆われたが、これからロボットや人材の育成、クレーン設備の試運転などが実施され、2017年11月末からいよいよ「閉じ込め」が稼働し、今後100年の安全性が確保される。


 他にも興味を引いた記事がいくつもあるのだが、まずは以上、投稿しておきます。

31年目のチェルノブイリ関連記事まとめ(日本語サイト編)

 1986年4月26日にチェルノブイリ原発事故が起きてから31年が経過した。例年、この時期にチェルノブイリ関連の記事が出るのだが、日本語サイトでは特に特集などが組まれることもなく、あっさりしたものだった。

 そんな中で一応、以下のような記事が出ていたので、引用しておく。

ポロシェンコ氏はシェルター前で「何よりチェルノブイリの悲劇で、われわれの兄弟ベラルーシ人も被害を受けた」と連帯を表明。ルカシェンコ氏は「ベラルーシ人とウクライナ人はチェルノブイリ事故に国境がないことを知っている」と述べ、原発事故の恐ろしさに警鐘を鳴らした。

チェルノブイリ事故から31年、「癒えない傷」=ウクライナ・ベラルーシ両首脳(時事)

 例年、4/26にはウクライナの大統領がチェルノブイリ原発を訪れて、式典に参加するが、今年はベラルーシのルカシェンコ大統領も参加し、両国の結束をアピールした形となっている。

 こちらのVedomostiの記事によると、ポロシェンコ大統領は「誰も、いかなる時もウクライナとベラルーシを仲違いさせることはできない」と述べ、対するルカシェンコもこちらの記事によると、「必要とあらば、歩いてでも、あるいは土地を耕すためにトラクターででも助けに行ける。隣人は選べない。ベラルーシはこれまでもこれからも信頼できる友人である」と述べている。

 チェルノブイリ原発事故の犠牲者はロシアにも大勢いるのだが、こういう政治情勢であるため、ガン無視ってことになっている。プーチンがロシアの大統領である限り、この状況が変わることはないだろう。

 その他、日本語で記事になってたのは、ざっと見た範囲では以下の通り。例年より少ないのはやはり、歳月による風化ってことなんだろう。

 最後のはチェルノブイリ関連ではないが、このタイミングで編集されたようで、福島第一原発事故関連の現状のまとめ映像になっている。

 最初の記事は 医師の振津さんたちが活動されているチェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西の記事。今年は浪江消防団の物語が上演されるとのこと。詳細はこちらのPDFを参照ください。