チェルノブイリ、福島第一に続く可能性のある危険な原発はどこか

 表題のタイトルの記事がこちらのロシアのニュースサイトに出ていた。

 トップはしばしばこの類の記事で取り上げられることの多い、アルメニアのメツァモール原子力発電所。地震多発地帯という立地にもかかわらず、チェルノブイリ原発同様の格納容器がない旧式の原子炉で、近隣諸国から閉鎖をたびたび求められているが、アルメニアの電力事情は悪く、停止するわけにはいかない状況が続いている。ここではさらに「地震対策がなされていない」「山岳地帯に立地しているため冷却用の水の供給が困難」などの理由が挙げられている。

 次に挙げられているのが、ブルガリアのコズロドイ原発。日本語で読める情報としてはATOMICAのブルガリアの原子力発電開発 (14-06-06-03)が詳しい。こちらによると、ここの1~4号機はブルガリアのEU加盟交渉で廃炉が決まり、稼働していないが、5,6号機については「2,200に上る設計変更、制御室の改善、安全性の向上が図られ」、今も稼働している。しかし、運転寿命はそれぞれ、2017年、2019年であり、ベレネ原発を新設する計画があったが、予算や福島第一原発事故の影響で建設中止となっている。このサイトではさらに「危機発生時に対処できるだけのスキルが欠如している」「原子力の安全文化レベルが低い」「ポスト福島対応が出来ていない」など、散々な言われようをしている。

 3,4番めには意外にも「西側」のベルギーのドール原発とティアンジュ原発が挙げられている。ドール原発については、「原子炉シェルの微細なクラックの存在」「人口密集地帯の立地」「国際原子力事象評価尺度でレベル1,2の事故が定期的に発生」などの理由で、ティアンジュ原発については、「原子炉外側に侵食が発生している」「時代遅れの安全技術」「2015年に4人の職員が規則違反で罷免された」などを理由にあげている。

 ベルギーの原発の闇については、ベルギー・ティアンジュ原発の暗黒史なども参照。

 なお、こちらによると、2015年に閉鎖予定であったドール1、2号機とチアンジュ1号機については、10年間延長が発表されているが、ベルギーでは2003年脱原子力法成立により、2025年にはすべての原子力発電所が姿を消すことになっている。

 ちなみに先ごろ亡くなられたカルパンさんがゆうてはったのは、次はアメリカのインディアン・ポイントが危ない、とのことだったが、インディアンポイント原発閉鎖  エンタジー社が閉鎖に合意という記事にあるように、「同発電所を2021年4月までに閉鎖することで合意した」とのことで、同原発から60kmの距離にあるニューヨークに被害が及ぶ可能性があったが、このまま閉鎖まで事故が起こらないことを祈りたい。

 日本を含めた各国も老朽原発は特に閉鎖を早く決断してほしいところ。

ウクライナ原発で使用されている核燃料の調達先は依然としてロシアが7割を占めるが、ウエスチングハウス・スウェーデン社製の割合が増えている

 こちらの記事によると、ウクライナが調達した核燃料は2016年実績でロシアの核燃料会社のTVELから3億8680万ドル、ウエスチングハウスから1億6200万ドルとなっていて、切り替えが進んでいるが、今も7割がロシアから調達されている。

 2015年比で見ると、全体として14.72%減っており、ロシア製は36.7%減となっている。

 ちなみに、このウエスチングハウスはウエスチングハウス・スウェーデン社でスウェーデンから調達しているようだ。この会社については、ATOMICAのスウェーデンの核燃料サイクル (14-05-04-05)が詳しい。

 なお、こちらの記事によると、ウエスチングハウス・スウェーデン社は東芝子会社たる米ウエスチングハウスの破産いかんに関わらず、ウクライナへの核燃料を現在もこれからも供給し続ける、という声明を出しており、東芝やウエスチングハウスの状況がどうなろうともただちには影響しないとしている。

ウクライナの原発依存度が60%近くになった?

 ロシアの国営テレビ局「チャンネル1」のチェルノブイリの日にキエフでウクライナの原発問題が語られるという報道の中で「ウクライナでは原発依存度が60%近くまで上がっている」という文言があったので、調べてみた。

 こちらによると、2016年の総電力に占める原発の割合は52.3%となっていて、2015年の55.6%から下がっている。特にザポリッジャ原発で前年比-21.1%と落ち込んでいる。60%近くというのは2015年の55.6%を四捨五入するとそうなるが、やや言い過ぎの感が。ただ、元々40%台後半ぐらいだったのが、ドンバスからの石炭入手が困難になり、石炭火力が稼働できない、などの要因で上がってきているのは確かなようで。

 ウクライナの電源構成は2016年で原発が52.3%(2015年は55.6%)、火力が36.6%(同35.2%)、水力が5.9%(4.3%)などとなっており、代替エネルギーは1%程度にとどまっている。

 Wikimediaのこちらのページにウクライナの電力生産の変遷のグラフが出ているが、ソ連崩壊直前までは順調に伸びていたものの、崩壊後にガタ落ちし、その後、リーマンショックで、また2014年のウクライナ紛争でさらに落ち込んでいることがわかる。

 先のチャンネル1の記事でフランスのル・モンド紙の記事を引用する形でウクライナを「最も核の危険度の高い国」としている。理由として、ウクライナの原発はロシアで開発されたもので、部品等もロシア製であるが、そうした部品が使えなくなるとメンテナンスすらできなくなる可能性があること、また、燃料もロシア製であることが前提とされているが、切り替えが進んでいること、などが挙げられている。

 ル・モンド元記事はチェルノブイリで「手遅れになる前に行動しなければなりません」という記事。

 これもGoogle翻訳の助けを借りてナナメ読みしたところ、以下のようなことが書いてあるようだ。(諸事情でフランス語文法やり直し勉強中で辞書の助けがあれば、ある程度は読める状態にはなりつつあり。。。)


 新アーチの目的は3つあって、(1)風化から旧石棺を防護する、(2)放射性物質拡散の危険回避、(3)チェルノブイリを安全なエコロジカルな場所に変える、このうち(3)が最重要。これは旧石棺の解体と放射能除去なしには不可能。ウクライナは科学と技術の国だが、この課題を解決するためには先進国の支援が必要で、資金的にもウクライナ単独では不可能。ウクライナは原発シェアが50%の国だが、使用済み燃料の保管に関わるセキュリティ維持の部分でもリスクがある。政治と経済が不安定であることも懸念の一因。


 この文脈での結論がチャンネル1で引用された部分となっている。もっともな懸念ではあるな、という印象。

31年目のチェルノブイリ関連記事まとめ(ロシア語・ウクライナ語・英語サイト編)

 ロシア語・ウクライナ語と英語圏のチェルノブイリ関連記事をGoogle翻訳の助けを得ながらナナメ読みしたのだが、昨年に旧石棺が新石棺(アーチ)で覆われ、いよいよ今年から解体作業が始まる、ということで、事故発生から最近の事情までをまとめた記事がいくつも出ていた。

 ロシア語・ウクライナ語記事だと例えば、こちらとかこちらとかこちらなど。

 検索すると、30年の時の記事へのリンクなども見かけられ、やはり、31年目ということで、5で割り切れる数字でない年の場合、やや低調となるようだ。福島の原発事故も10年という区切りの時までやや低調になるのかもしれない。

 ウクライナ紛争後、ウクライナの原発では原発用核燃料がロシア製からウエスチングハウス社製などに切り替えられているが、ロシアのサイトでは、以前、チェコの原発が同様に切り替えたが、トラブルで元に戻した経緯などを踏まえ、ウクライナ各地の原発でこのまま使用を継続すれば第二のチェルノブイリとなるであろう、との警告がなされている。東芝を危機に追い込んでいるウエスチングハウスだが、いろんな意味で注視し続ける必要がある、といえるだろう。

 日本でもこちらなどで報道されていたように、チェルノブイリ30km圏内での太陽光発電プロジェクトについての記事も出ていた。こちらはVOAの英語記事で、ウクライナのセメラーク環境・天然資源相へのインタビューが掲載されていて、手始めに110万ドルの民間投資により、1500kWの太陽光発電所が建設できるとし、将来的には累計で250万kWの電力供給が可能となるとしている。チェルノ4号炉は100万kW出力だったが、チェルノブイリ原発全体の稼働時の出力の半分程度の電力を生産できることになる。

 このプロジェクトの利点としては、使い途のない土地の有効活用や既存の電力設備が活かせることなどが挙げられるが、こちらの日本語記事で言われているように「このプロジェクトの最大の問題は太陽光パネルへの放射線の影響とメンテに携わる技術者の被曝リスク」という問題があり、こうした点を解決するのは簡単ではないだろう。

 Yandex Newsでチェルノブイリで検索すると山ほど記事が出てきて、約500ほどタイトルだけ見たが、それ以上は断念した。重複も結構あるが、記事の半分ほどは旧ソ連圏各地での事故処理作業者を称えるイベントのローカル新聞の記事。毎年思うが、ソ連が国を挙げて各地から人をかき集め、この事故に取り組んだことの証ともいえるだろう。

 日本の場合、ローカル新聞で福島第一原発事故が取り上げられるのは自主避難者関連や福島支援の記事が多い気がするが、事故処理作業者の健康問題は旧ソ連圏に比べると大きな問題とはなっておらず、事故の経緯や国情の違いもあるとは思うが、それなりにチェルノブイリ事故の教訓を生かしたと言って良いのかもしれない。

 ただ、日本でも昨年、「白血病発症の福島原発作業員に労災認定」という記事にもあるように、少しずつ問題が発覚しつつあり、今後、大きな社会問題となる可能性はある。また、事故当時、風下に当たる海上にいた米兵の被曝問題についても、“「トモダチ作戦」訴訟、米政府が日本の見解に反論――被曝兵士の裁判は米国で実施か”などを見ると、アメリカというガイアツにより、別の側面からこの問題に疑問が投げかけられることになるかもしれない。

 以下に、冒頭でリンクを上げた記事から興味を引いた部分を抜粋してみる。


 2016年、ウクライナ大統領はチェルノブイリ30km立入禁止区域での生物圏自然保護区設立の法令に署名し、2017年3月31日に発効した。これは10km圏を除くエリアが対象となっていて、特別な産業用エリアが設置される予定で、放射性廃棄物処分場やソーラーパネルの設置などが計画されている。

 この区域に入る条件などはこれから検討されるが、10km圏内に入るにはこれまで同様に厳格な条件が課せられる。

 (昨年の)5月には福島第一原発事故の植物相(flora)と動物相(fauna)への影響を調査する日本との共同プロジェクトが始まっていて、ウクライナから12の研究機関が参画している。

 チェルノブイリ立入禁止区域への訪問者数は非常に増えており、2016年には32000人となり、2015年から倍増している。

 リヴィウから持ち込まれたゴミがチェルノブイリゾーン内に投棄されているのが見つかった。ゾーン内をゴミ捨て場にしようとする計画があるが、ゾーン内にはサマショールが今も約150人住んでおり、ここをゴミ捨て場にすべきでない。

 福島では帰還が始まっているが、チェルノブイリでは帰還しないのはなぜか? 気候条件の違い(海に近い)と福島では地形が山がちである点が挙げられる。福島では山があることにより、放射性物質が上から下に流れていくが、平地のチェルノブイリではあまり移行せず残ったままとなっている。日本での60年代の大気圏核実験のフォールアウトからの観察結果では1年で降下した核種のうち8%しか残留しなかった(?)。チェルノブイリの経験は福島にとって重要だが、それぞれ独自の条件下で考える必要がある。

 2016年11月に新アーチで覆われたが、これからロボットや人材の育成、クレーン設備の試運転などが実施され、2017年11月末からいよいよ「閉じ込め」が稼働し、今後100年の安全性が確保される。


 他にも興味を引いた記事がいくつもあるのだが、まずは以上、投稿しておきます。