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「チェルノブイリは犯罪者天国となった」

 こちらに「チェルノブイリは犯罪者天国となった」という記事があり、チェルノブイリ森林火災について書かれていたので、ざっくり要約しておきます。


 今年、すでに3回もチェルノブイリ立入禁止区域で森林火災が発生しており、先日も新石棺近くで隠しカメラが見つかった。原子炉近くの管理下にない区域で何が起きているのか。

 立入禁止区域に住む住民の多くは相次ぐ森林火災の原因は違法行為の痕跡を消すための放火だとみている。樹齢70-80年の売り物になる木を伐採し、週末の夜に搬出している。伐採量が計算出来ないように放火した。地元住民はポリスケ付近で材木を運ぶトレーラーを目撃している。空間線量率は2,3倍あがった。住民曰く、木材はキエフ近辺の家具工場へ運ばれたに違いない。

 キノコやベリー、魚なども立入禁止区域内で採取されており、それらはキエフなどの市場で売られている。実質、地下鉄駅周辺の物売りはコントロールされていない。


 私もよく地下鉄近くで売られている野菜や果物を買っていた。場所がよいところは恐らく「みかじめ料」的なのを支払っているはずで、ある程度はコントロールされているのではないか、と思っているが、実際のところは誰にもわからないだろう。

 市場に行くと、メインストリートから外れた場所で年金では食べていけないと思われる高齢者が数少ない品物を売っているのを見かけることがあり、この人たちも「ショバ代」は払っているだろうにペイするのだろうか、と思ったりした。

 木材に限らず、強制移住後の集落では様々な換金可能な物が盗み出され、すでに売り払われている。日本でも地元有志によるパトロールがなされているが、限界があり、同様の事態が発生していると聞くが、こういうのどうにかならんのだろうか。

チェルノブイリ森林火災の現場ともなった放射性廃棄物保管場もあるブリャコフカ村

 そろそろ「別居中」の嫁さんと子供が帰ってくるので、部屋を掃除・整理してたら、今回のチェルノブイリ森林火災が起きた時に探してて見つけられなかったウクライナで発行されたチェルノブイリ汚染地図が出てきた。マップ自体はネットでも見られるものだが、本棚に縦置きはもちろん横置きしようとしてもはみ出すほど大きい(ページ数はそんなにない)ので、本棚の中でなく、外側に立てかけるように置いてたが、その上に板がかぶさり見えない状態になっていたのだった。

 ということで、改めて地図を眺めてて気づいたのは、今回、火事に見舞われた村のうち、Рудня-Ильинецкая, Глинка, Лубянкаは原発から南西に20km以上離れた位置にあるが、Буряковкаだけは上記3村とはやや離れた、原発から西の方角に12,3km辺りに位置する村であるということで、さらに、うかつにも今気づいたのだが、この村は放射性廃棄物の埋設処分場がある村だった。日本語で「ブリャコフカ」でググったら、2012年の自分のツイートが3つ目に出てた。(ウクライナ語では「ブリャキウカ」)

 あと、衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書の中にも「放射性廃棄物保管場「ブリャコフカ」及び予定地「ヴェクトル」視察 という題名の視察報告PDFがあるので、関心ある方はどうぞ。6ページほどの分量です。

 この報告書によると、この処分場では深さ12mで穴を掘って廃棄物を埋めていて、さらに77の井戸を掘って、地下水を監視中だが、今までに漏れが見つかったことはないとのこと。

 今回の森林火災の時の記事を読んでると火災が廃棄物埋設場に近づいていることへの懸念が示されていて、埋設場ってあんなとこにあったんだったかなぁ、と思ってたのだが、あれはこのブリャコフカ村を指していたというわけだった。あと、コムソモールスカヤ・プラウダの記事の地図の説明で出ていた「プリピャチから7km」というのは、この村のことを指していたのだろう。

 グーグルマップだとだいたいこの辺りかと。確かに集落跡が見える。原発までの距離を測ると12.14kmと出たので、ここなんだと思う。ちなみに原発からРудня-Ильинецкаяまでは23.5kmほどだった。

 今回の森林火災の現場は比較的ゾーン内でも汚染度の低いところだったが、このブリャコフカはチェルノブイリ原発からほぼ真西に当たる。汚染地図を見ると分かるが、原発から真西に伸びる濃い線があり、ホットスポット(というかライン)になっている。つまり、ブリャコフカは汚染度が低いとはいえない場所で、さらにいうと、プルトニウム・アメリシウム241などのα線核種のホットスポットでもある場所で、手元の地図で目見当で見ると、それぞれ1000Bq/m2程度の汚染度の場所のようだ。ちなみに2011年時点のセシウム137だと40ci/km2(1480kBq/m2)以上はある。

 ということで、火事があったとすると、そうした核種やストロンチウムの再拡散もいくらかあったのではないかと思うのだが。

チェルノブイリ森林火災の原因(続き)

 今朝、「チェルノブイリ森林火災についての識者コメント」という記事で、火元について、タバコのポイ捨てか何か不明だが、何らかの火の不始末が原因ではないか、と書いたが、やはり放火ではないか、という記事も出ていたので、紹介しておく。

 こちらの記事によると、人為的な放火である根拠として、川の両側で火元が見つかったことを挙げている。確かに両側でたまたま不始末が重なった、というのは、考えにくいかもしれない。

 同じ記事で、春になると無許可でチェルノブイリの立入禁止区域内に侵入してくる「ストーカー」が増え、犯人がそうしたストーカーの中にいる可能性も指摘されている。ここでいう「ストーカー」とは、つきまとい行為をする人、という意味ではなく、タルコフスキー映画の「ストーカー」と同じ「道先案内人」のこと。ウクライナ発のゲーム『S.T.A.L.K.E.R. SHADOW OF CHERNOBYL』の影響で若い人の間にチェルノブイリ詣でをする人が増えた。

 あと、もう一つ書いておくと、キエフ市内にもチェルノブイリの森林火災の煙が到達し、臭いを感じた、とする記事も出ていたが、同じ記事内の記述によると、それはチェルノブイリのではなく、ドニエプル川左岸の野焼きが発生源とのことで、当日の風向きからもありえないので、おかしいなと思っていたが、これで謎が解けた。

 同記事内で、「どのようにして放射能から身を守るか」という記述があったので、ついでに次のエントリーで訳しておきます。

チェルノブイリ森林火災についての識者コメント

 2015年4月26日発生したと思われる今回のチェルノブイリ森林火災は5/1発表の当局コメントによると、まだくすぶっている箇所はあるものの、概ね鎮火したと見てよさそうです。

 こちらにウクライナなどの各界の識者のコメントが出ていたので紹介しておきます。私のロシア語力で理解した範囲のざっくりした大意だけとなりますが、ご容赦ください。


●ユーリ・バンダジェフスキー氏
分析センター「エコロジーと健康」所長

事故の祈念の日の翌日に起きたことは嫌な気分にさせる。ゾーンは我々には大変危険な場所で有刺鉄線で囲う必要がある。子供に危険な物を触らせないように、危険な場所に踏み入れさせるべきでない。観光も企業活動もダメ。ゾーン内の木材を商業目的で伐採し、ヨーロッパ地域などに販売するようなことは許されない。チェルノブイリ原発周辺の森の木には放射性セシウム以外にも大変危険なストロンチウムやアメリシウムなどの重元素が含まれる。ゾーン内で活動はしてはならない。

●セルゲイ・パラシン氏
元チェルノブイリ原発総責任者、現国家安全保障防衛評議会副議長

周辺に住む人々に影響するようなことは何も起こらなかったし、危険はなかった。放射能大量放出もなかった。チェルノブイリ原発までの距離も十分遠く、脅威はなかった。放射性廃棄物埋葬地に到達していたとしても地上の層で閉じ込められているので、放射能の増加はわずかだったであろう。

●トビアス・ミュンヒマイアー氏
グリーンピース・核エネルギー専門家

ウクライナの他の原発同様、チェルノブイリ原発もテロに対し脆弱。ただし、狙うとしたら、チェルノブイリではなく、稼働中の原発であろう。ゾーン内の火事はよくあることであり、もし害をもたらそうとするなら、他の方法を取るだろうから、テロではないだろう。かなりの量の放射性物質を含んだ煙がベラルーシ方面に向かったため、ベラルーシ南部ではその影響に注意を払う必要がある。

●アントン・ゲラシチェンコ氏
党派「人民戦線」議員

チェルノブイリゾーンの境界線は100キロ以上に亘り、人々をゾーン内に入れないようにするのは困難。雨が長期間降っていない時期の火は特に注意すべき。森林火災を防止するために観光を禁止することはできない。観光客に注意喚起すべき。春の森は火がつきやすい。タバコのポイ捨てで容易に火がつく。よって、何かの目的で放火したとの陰謀論はまったくありえない。概して、これだけの面積での森林火災だと目撃者がない場合、犯人特定は困難。

●ボレイコ氏
生態学者

4月26日のチェルノブイリの日には多くの訪問客がいた。焚火、タバコのポイ捨て、エンジンの点火などで火が移ったと考えるのが自然。今回の火事はテロではなく、不注意であると確信。テロの場合、例えば、キエフ上流のダム湖を攻撃するだろう。キエフ半分は水に浸かる。
一貫性のない政策のせいで、大統領が変わると、研究予算が削減される。ゾーン内で研究に従事していた生物学者は途中で研究を終了した。今あるのは、外国の学者との研究ぐらいだが、彼らは常時いるわけではない。ゾーン内に保護区を作る計画があり、環境省は予算を取ったが、作られていない。どこに行ったのか。汚職、詐欺、金儲け主義の企業ばかり。

●ニコライ・マロムシュ氏
ウクライナ対外情報機関長官(2005-2010年)

国を不安定化する目的で、チェルノブイリや他の原発はテロの対象となりえるが、ロシア・ベラルーシ・ヨーロッパなどにも波及してしまう。今回のは、政府機構の未熟、状況をコントロールできない無能さを示すために意図的に放火したのではないか。


 以上、全文訳は大変なので、抜粋としました。総合すると、今回の森林火災は意図的な放火ではなく、不注意な訪問者による火事の可能性が高い、ということかと。

 この件で、日本の帰還困難区域などでの山火事対策がどこまで出来ているのかが気になった。ググると今年2015年3月28日に浪江町の高線量地区として知られる赤宇木地区で火事があったようで、こちらで現地の映像を見ることが出来る。

 山火事は再拡散につながるので、発生させないことが第一とはいえ、どうしても発生するものはしてしまうので、可能な限り、消防の皆さんの被曝を軽減できるような対策を予め準備しておき、延焼範囲を小さくするために、早期に消火出来る体制を築いておくことが必要なのかな、と。(いや、もうやっておられるとは思うが。。。)